リーダーの在り方について、この数年でもだいぶ意識が変わってきているように実感します。
「それぞれのチームメンバーが自信を持ち、活き活きと輝き、そして自発的に仕事に取り組むカルチャーを醸成するにはどうすれば良いでしょうか。」という質問が増えてきました。
そのような方々にお聞きすると「自分は若いころは寝る間も惜しんで努力に努力を重ね、注意してくれたり叱ってくれる上司に育てられ、今の地位に就くことができた。当時は辛かったけど、今はその方に感謝しています。でも、今はそのやり方が通用しないんです。」とおっしゃいます。皆様も、このようなお話はどこかでお聴きになったことはありませんか?
現代のリーダーは、バイオリンの名奏者であるよりも、オーケストラの指揮者の役割を担っているのです。チームメンバーのさまざまな個性やニーズを活かしながら組織のパフォーマンスとしてのハーモニーを奏でる事ができるリーダーという事でしょうか。
リーダーがチームメンバーよりも多くのスキルや知識を持っているとは、もはや言えなくなりました。いろいろな専門知識を持ったチームメンバーの特性をうまく活かし、チームとしての高いパフォーマンスを発揮できる環境を整備することがリーダーとして求められるスキルなのです。上に立つことで表面的な地位や権力は得られても、真のリーダーとして、チームメンバーからの信用、信頼、尊敬を得られるにはどうしたらよいでしょうか。という事が今のリーダーのお悩みのようです。リーダーとして、オーケストラが調和して美しい音楽を奏でるようにするには、それぞれのメンバーが他者とリズムを合わせ、共感しあいながら、かつ自分たちの才能を最大限に生かしたいと思えるようにしなければなりません。では、どのようにしたらそのようにできるのでしょう。
もちろんハード・スキルの重要性は否定できません。しかし、それ以上に重要な事に社会は気づいてきているようです。それは、自分よりもっと高く、最新の専門知識などのハード・スキルを持つメンバーからの惜しみない協力を得るスキルです。リーダーシップに必要なスキルはハードからソフトへと移ってきているのです。
極端な事を言えば、今日のリーダーは、チームの中で最も知識に長け、技術力を持った人物でなくても良いという事なのです。もちろん、組織として、知識やスキルを持った人材が必要ですが、リーダー自身がそれを持つ人材になる必要はないのです。現代はチームメンバーの短所やミスについてガミガミ言うリーダーシップから、良い部分を見つけるリーダーシップに移行しているのです。こんにちのリーダーは、チームメンバーの長所を認め、こうした能力を強化できるように指導していくことが必要なのです。また、リーダーにとって、自分でやった方がずっと上手にできると分かっていながら、権限を他の方に譲って任せるように考えを変えるということもなかなか難しい事かもしれません。チームメンバーはすでにある程度のスキルを持っていますが、権限委譲の目的は、さらに高いレベルに彼らを引き上げ育てることにあります。
現代はスピードと質、量の全てが求められる時代です。そのためには優れたリーダーが必要とされます。それらの優秀なリーダーたちを次々と生み育てる「人を育てるリーダー」がさらに昇進、昇格していきます。このような次世代のリーダーたちを育成するには、早い段階から期待をかけ、責任を与えていきます。高度な仕事を委任し、プロジェクトが失敗しないようにその移行過程を見守りつつ、背中を押します。その際に細かく管理して部下を委縮させてしまうことがないようにするということが大切です。
過去の受講者に、原則の達人がいました。後半では、そのKさんのエピソードをご紹介させていただきます。
それでは、原則の達人kさんのエピソードをご紹介させていただきます。
kさんにはちょっと困ったチームメンバーがいたそうです。いつも同じミスを繰り返し、仕事の成果が出せていないチームメンバーだったそうです。さて、Kさんは、どうしたでしょうか。そのチームメンバーのミスをせ責めたりせず、褒めました。しかし残念な事に、そのチームメンバーのパフォーマンスはなかなか改善されませんでした。そこでKさんは何をしたでしょう。そう、もっと褒めたのです!褒め続けたのです!!!そしたら、そのチームメンバーの、パフォーマンスが改善したのです。
私はこの話を聞いて、目頭が熱くなりました。
kさんは、諦めず、その部下を信じ続けたのです。
ここでも、私はデールがよく引用したマークトウェインの言葉を思い出しました。もう一度ご紹介させていただきます。「本当に偉大な方は、あなたも偉大になれますよ。と思わせてくれる方である。」
私はこのkさんのエピソードから、さらにその上があり「本当に偉大な方は、あなたは「既に」素晴らしいですよ。と思わせてくれる方である」なのではないか。と思いました。まさに、このKさんは、チームメンバーに「あなたは既に素晴らしい」というメッセージを贈り続け、部下にその意見を自分のものと思わせる事ができたのです!
先週、会社の経営者である友人とこのような話しをしました。
「賢い人の定義って何だろうね?」と私は聞きました。
その友人は
「正しい情報を得て、正しい判断ができる人。」
そして続けて私に
「どう思う!?」
ときいてきました。
実は、その時点で私には答えが分からなかったのです。
とっさに私は、言いました。
「賢い人というのは、、、、えーっと例えば、、、必要な知識や情報を必要なタイミングで得る事ができる人かな。でも、うーーーん。何かが違う。」
その後に、二人で、さらに話ました。
自分が一番になりたいと思えば思うほど、競争心が心を占領します。劣等感があるからこそ、他者と比較する事で優越感を持ちたいという気持ちが芽生えます。常に他者と比較し、自分の素晴らしさに気づけない。賢いが故に人と比較をし、苦しい人生を歩むことになってしまう。賢いがゆえに苦しいのであれば真に賢いと言えるのか。ということは、どんな時も自分が心の平安を保つ方法を知っている方が真に賢いのではないか!!!
そして、ついに
「賢い人というのは、、、自分は無知であるという事を知っている人。そのことを認めることにより、常に他者からのサポートを適切に得て心の平安を保てる人」なのではないかという結論になりました。
そんなことを考えていたら、まさにその翌日、デール・カーネギーが「人を動かす」で引用した老子の言葉が目に飛び込んできました。
「川や海が数知れぬ渓流の注ぐところとなるのは、身を低きに置くからである。そのゆえに、川や海はもろもろの渓流に君臨することができる。同様に賢者は、人の上に立たんと欲すれば、人の下に身を置き、人の前に立たんと欲すれば、人の後ろに身を置く。かくして賢者は人の上にたてども、人はその重みを感じることなく、人の前に立てども、人の心は傷つくことがない。」
そう、老子に学ぶ真に偉大で賢いリーダーとは、自らの光で他者を照らし輝かせる事ができ、その反射した光で自分の足元も明るくできる人なのです!