これは、弊社のCEOが海外でとあるグローバル企業のスピーチに参加した時の話です。
参加者一同が一流ホテルの大きな会議ルームに通され、ランチを取りながらしばらく歓談をしているうちに、プレゼンテータ―であるこの企業のCEOが会場に入られ、皆さんが拍手で彼を迎え入れたそうです。有名ブランドの美しいスーツに身を包み、丁寧にセットされた髪型からつま先まで、壇上に上がるまでの彼の姿は溢れんばかりの自信に満ちていたようです。会場の聴き手これからどんな素晴らしい話が聞けるのかと皆興味津々で耳を傾けていたそうです。お茶目なジョークを交えたスピーチが始まり、更に聴き手がのめりこみ始めたところで、雲行きが怪しくなってきたそうです。曖昧で微妙な表現が多く出始め、次第に論点があやふやで関連付けが難しく、理解に苦しむようになってきたようです。聴き手は自分の理解が悪いのか周りも同じ思いでいるのかと周囲のリアクションを見ようと顔を見合わせながら、ただ座って聴きながら時間が過ぎていったそうです。 問題は誰の理解が悪い、という話ではありません。スピーチ自体が成功と呼ぶには遠い、という点は変わらないのです。『聴き手が理解しやすいように、メッセージを伝える』、それが大切なのです。どれだけ魅力的なスーツや会場で演出をしたとしても、聴き手が受け取るメッセージが限りなくゼロでは、逆に印象が落ちる可能性すらあります。
どれだけ企業が成功しているのかを外観だけで印象付けるのではなく、聴き手を思い、構成立てて内容をまとめる必要があります。
明確で、一貫性があり、話の筋が通っていれば聴き手が理解に苦しむ可能性は激減します。多くの場合は私用頻度が少ない方がお勧めですが、理解が難しい内容の場合、知覚的資料としてスライドを利用するのも、聴き手にとって理解の手助けとなる手段の一つです。その場合話しの内容に従って、スライドを出したり、隠したりすればよいのです。聴き手の理解の助けになる他のものとしては、「3つの重要な問題があります」や「取り組むべき5つの分野があります」といった数字を使った表現をすることで、話の枠組みが聞き手に示され、理解を高めることが出来ます。このように内容に構成を持たせることで、話しているポイントと他のポイントを関連付ける理解度をあげることができます。
スピーカーとして我々は、聴き手がだれであろうと理解できるように構成を作る責任があります。凝りすぎた表現やメイントピックから逸脱しすぎた余談は、蛇足にしかなりません。一度失った聴き手の興味を取り戻す間に、聴いてほしかったポイントが流れてしまうかもしれません。スピーカーとして聴き手の前に立つ我々は、企業を代表して立っているのです。会社とご自身のブランド価値を保つためにも、聴き手にフォーカスし、端的で明確な伝え方をとりましょう。そうすれば、ブランドの魅力も高まり、高い評価が得られます。