昨年、カフェのテラス席でランチをしていた時の事です。お隣の席に、2人の男性が座りました。一人の方は明らかに見た目に自信と余裕を纏ったような落ち着いた雰囲気の男性。もう一名の男性はその方より一回りくらいお若い感じの方でした。年上の男性が、若い男性に向かって「最近どう!?」と一言聞きました。そうすると、若い男性の方は「最近仕事でこういう事がうまくいっています。人脈構築のためにこんなことに尽力している。。。あれも、これも、がんばってます!こんな商品も仕入れました。あーです。こーです。。。」と話していました。私は、会話を聞こうとしていたわけではありませんが、彼らの会話が耳に入ってくるに任せていました。2分、3分、5分くらいたって、ハッとさせられることがありました。質問をした男性のほうは何も話さず、「いいねー」「あーそう!?」「どうして!?」「そうかー」「それで?」と、合図地しかいれていないのです。しかも、、、ものすごい興味をもって聞いている雰囲気が出ていていたのです。私は、とにかく、その素晴らしい傾聴力に感銘を受けました。そして、それからさらに5分くらいしてから、お若い男性の方は、年上の男性に「どうやったらさらに売り上げが上がるか。。。」と質問しました。その方はやっと落ち着いた口調で話し始めました。「セールスはね。売らないで大丈夫。伝える仕事なんだよ。」「そして人の嫌がる事をしてはいけないよ。」初めて口を開いたその方の、メッセージのシャープだった事!そんなことを覚えております。それからちょうど1年たちましたが、その稲妻が走ったような感覚をまだ覚えています。
この日は、良い聴き手になることの大切さ、良い聴き手でいることで、逆にシャープにメッセージを届けることができること。を客観的に拝見することができました。まるで絵にかいたようなロールプレイだったとも言えます。そしてもちろん、「売らないで売る」というセールスのお仕事について改めて考えさせていただける機会にもなりました。
売ろうとしないセールスパーソンからつい買ってしまった。というご経験がある方は多いのではないでしょうか。セールスパーソンが、「買ってください!」と言わずに、お客様から「売ってください!」または「一緒にビジネスをしましょう!」とおっしゃっていただけるようにすることが理想です。
最近、様々な方々に自分が目指す理想のセールスパーソンの姿をお聴きすると、「傾聴ができるセールスパーソン。」というお声を多くお聴きするようになったと実感します。そして、「お客様のニーズをお聴きして、しっかりと提案できるセールスパーソンになりたいです。」というお声も多く耳にします。そうする事で「お客様に求められ、毎期ターゲットを楽々達成するセールスパーソンになれる」ということなのです。
ところが、実際の商談になると、なかなか良い聴き手になる。を実践できないというご相談も多いです。まさに、「知っているとしている」の違いなのかもしれません。特にオンラインでのミーティングの場合は、お互いに大切な時間を有効活用するという相手への配慮もあるかもしれませんが、あまり挨拶や雑談もなく、必要な事を論理的にまとめで、自社製品の良さをアピールするセールスピッチをすることに重点をおいている。という方も多いようです。成功するセールスは博識と思われる事ではなく、お客様にこの方と話していて心地よいと思っていただく事。と知っていながらも、つい、沢山話してしまうのだそうです。
先日、私がクライアントとして、あるセールスパーソンのkさんと商談をしたときのことです。kさんは半年前に弊社の担当になってくださったのですが、先月末に久しぶりにご連絡をいただき、今月はじめにオンラインでミーティングを行いました。kさんには今月はじめにお嬢様が生まれたとのことで、お嬢様が生まれてどんなに感動したか。そしてこれからは、より子供のために仕事に力を入れていく責任感がさらに強くなりました。とおっしゃってくださりました。ご自身のプライベートのグッドニュースをも積極的にシェアしてくださるkさんに、私はとてつもない親近感がわき、そのあとのミーティングも和やかに、そしてスムーズに進んだことが心に強く残っています。クライアントのタイプや状況にもよると思いますが、このようなアイスブレイクがあることにより、ミーティング中の一体感が増したことを実感しました。クライアントの私たちが応援したくなるセールスパーソンのkさんから沢山の学びをいただきました。
そして、kさんはミーティングの最後まで、私たちの現状や理想の状態について質問してくださり、そのギャップがイメージできるようにしてくださったばかりでなく、私たちが持つ課題に心から共感をしてくださったことが、言葉だけでなく、表情からも伝わってきました。kさんがさらに素晴らしかったのは、そのミーティングに参加していなかった、弊社社長の理想の状態と希望は何か。ということも質問をしてくださったのです。そして弊社社長が理想の状態を叶える事で得られる私たちの個人的なメリットにも言及してくださったのです!!!アートともいえる共感力、傾聴力で心がつながったことにより、私たちも彼の成功を心から応援したい気持ちになりました。kさんはこれから、さらにお客様から愛されるセールスとして活躍されることな、と確信しています。
皆さまには、本当に素晴らしい商品を商材として扱っているセールスパーソンだからこそ、商品やテクニックに頼らず、最高のクライアントのバイイングジャーニーを提供し続けることを目指していただきたいと思います。それには、良い聴き手になり、相手の関心に寄り添い、必要なソリューションを提供するだけではなく、その結果得られるお客様の個人的なメリットを可視化してくれることがとても大切になってくるのです。セールスパーソンの仕事は、お客様から信頼される アドバイザーとなることなのです。
私が新卒のころ、当時の支社長から、セールスとして右も左もわからない頃に言われたこと。それは、「まずは、お客様の話しを聞いてきなさい。」でした。「セールスは売らないで聴くこと」である。というアイディアは私のセールスパーソンのキャリアのベースになっています。
その当時は「オフィスを出て好きなところに行って、クライアントと沢山楽しい話ができて、セールスは、なんと楽しい仕事なのだろう!」と思っていました。クライアントミーティングの最後には、彼らのオフィスのご近所のおいしいお店も質問をして、「ランチはクライアントさんおすすめのお店に行く!」とかそんな密なお楽しみもセットで楽しんでいました。クライアントさんおすすめのお店に行ったらその感想をシェアして、さらにクライアントさんとの心の距離が近づく経験も沢山あり、結局ビジネスに良い影響があったと感じております。内勤の同僚から「ちづさん、いつも営業で外回り、大変じゃないですか??」と聞かれることもありましたが、当時の私は、「楽しいことをしてお給料がもらえてありがたいです。」と答えていたことを思い出します。
デール・カーネギーはセールスの成功の秘訣を一言で表現しました。その特質は人間にとって最も必要な特質であるとも言及しています。それは、「友人をつくる能力!」なのです。お客様を友人のように大切に想うことができれば、セールスパーソンとしても成功することになるのです。
ですから皆さん、お客様の良い友人で居続けましょう。そうすれば、お客様の成功にコミットし続けることができます!