『完璧なリーダーとは何でしょうか?一方思い浮かべていただいて、その方の特性を教えてください』。さて、10人にこの質問をしたら10人全員から違う答えが返ってくる、とまではいいませんが、なかなかの違いが出てくるものです。では一人にとっての『完璧』は、果して別の人にとっての完璧なのでしょうか?
上司が苦手で、あまり得意じゃない、怖い、そんなお声を伺う機会が実はしばしばあります。色々なお話の中で共通していたのは、そういった上司の方々は、大小はあっても『横暴な態度でマウントをとってくる方である』ということでした。ほぼ独断で決定した指示や命令を、コミュニケ―ション方法は度外視で発信します。会議においても同様で、自分と別意見や聞きなれない方法であれば「経験上この方法が正しいので、この方法でいきます。」と別意見をシャットダウンしてしまうわけです。経験談から、最高の投資収益率を生み出すために重要で正確かつ価値がある選択肢はこれ一択、と理論的かつデータに則ってコーナーに追い詰めるように話された日には、部下は首を縦に振る以外出来なくなっているでしょう。そのような環境下では、意見を出そうという気持ち将来的にどうなっていくでしょうか?心理的安心安全な環境という意味では如何でしょうか?『論理的で正しいことを言っている』イコール『絶対的正解』なのでしょうか?
勿論、経験は何事にも代えられない財産です。中には『これは私の経験でこういう結果が出るので、これは正しい。だからこそこの正しい情報を伝えなければならない』と部下の為に良かれと思い伝えているのだとおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。折角のその想いも、部下が受け入れることの出来る関係性や信頼性が構築されていなければ、どうでしょうか?常に否定される部下の自己肯定感やエンゲージメントはどうなっていくでしょうか?そうなれば、能動性や生産性はどうなっていくでしょうか?モチベーションにどう影響しそうでしょうか?そして、その全てが下がった人材は、どうなっていくのでしょうか?人材の採用と維持は、今まで以上にリーダーにとって無視することの出来ない仕事なのです。チームのエンゲージメント度合いは、既存顧客の維持と、新しい顧客を引き付けるために必要なブランドイメージの普及に多大な影響をもたらします。想像してみてください、我々の会社の下調べを行った顧客が大量の社員のネガティブコメントを見つけたとしたら、どうなるでしょうか。今の時代、ネットでの企業調査はどのクライアントも当たり前に行っています。そしてネットの情報は素早く広範囲に広がります。だからと言って『部下にゴマをすれ』とか『部下の意見を全部取り入れろ』なんて事をし始めたら会社のVisionもなにもあったものではありません。会社のVisionを大切に、部下の気持ちも尊重する。このバランスをとるのが我々リーダーの仕事なのです。
デール・カーネギーの調査では、リーダーがチームとの関係構築を行う上で妨げとなるポイントを4つ見つけました。先にお伝えしますと、この4つはひとつとして商品知識などハードスキル関連の問題ではありませんでした。 なんと4つすべてが人間関係についてだったのです。それでは4つのポイントを見てみましょう。
1.チームメンバーに誠実な感謝や称賛与える。 ゴマすりじゃないです。ここでいう賞賛とは、相手の努力やプログレスを認めることです。たとえ40%のプログレスだとしても、相手は40%にたどり着く努力はしてきたのです。そのプログレスを認めてあげることは、大きな意味を持ちます。やることの多いリーダーは、時間がない中どうしても『これをしろ、あれをしてみろ』と命令型の指示が多くなってしまう傾向になります。仕事を早く終わらせなければならないので、コーチングが後回しになってしまうのです。忘れないでください、部下は人であり、感情的な存在であり、同時に収益を生み出すポテンシャルを持っています。個性を殺して我々のコピーを作るのではなく、個人個人のポテンシャルを磨き出してあげれば、多角的なアプローチが可能になります。仕事におけるモチベーションについてのとある調査では、興味深いことに回答者の76%が『上司から感謝や称賛をもらったら、もっと一生懸命働働こうと思う』と述べました。相手を能動性やクリエイティブな思考を引き出すうえでも、適切な感謝や称賛を与えることは非常に大きな意味を持つのです。さて、我々は今どのくらいの頻度でチーム一人一人に対して誠実な賞賛を与えられているでしょうか?
2.自分の誤りをただちにこころよく認める。 『全ての失敗は部下の責任、成功は全て私のもの!』そんなどこかのガキ大将のようなリーダーに誰がついて行きたいと思うでしょうか。とはいえ、部下の失敗は全て私が責任を持つ!というのもなかなか現実的には難しいものです。我々リーダーにとっても失敗はキャリアアップの妨げですから、出来る限り避けたいところです。ラインとしては、責任はこちらもちの同意があって部下に任せた仕事で失敗が発生した場合、その責任は『勿論』とるべきでしょう。自分がどうよく見えるかばかりに気をとられているリーダーを持つ部下は、自分たちに割り振られた仕事以外、一切の対応をしないチームになっていきます。ある調査によると、間違いを認めることができる上司は出来ない上司と比べて、チームメンバーの仕事への取り組み姿勢に81%もよりポジティブな影響を与えることがわかりました。
3.誠実に相手の視点からものを見る。 チームの中で最も自社のビジネスについて理解がある人は誰でしょうか。勿論我々リーダーであるべきです。会社のVisionを理解し、目標を把握し、当然のように目標設定の理由も理解しています。中にはリーダーとして既に多くの経験を積んでいて、仕事に対する知識や深い洞察力に長けている方もいらっしゃるかもしれません。ともあれば、なぜ自身より経験の浅いチームメンバーの意見に耳を傾ける必要があるのでしょう?可能性として、自分の持っていなかった視点や発想が得られるということもあるかと思います。大きな理由の一つは、聴く姿勢そのものが信頼や人間関係の構築につながるからです。ある調査によると残念なことに回答者の51%が『上司が自分の話を聞いていない』と答えました。2人リーダーがいれば一人は部下にそう感じられている計算です。我々はどうでしょうか。自分のチームが意見や発言に100%注意を向けているのでしょうか。それともやることに追われて『聞いているふり』をして他のことを同時に考えているのでしょうか?はたまたそう見えてしまう聴き方をしていることはないでしょうか。
4.自分と周りに正直である。 周りから信頼を得るには『内的』と『外的』両面において誠実性を保つことが大切です。ここでいう内的とは『信念』です。どんな行動をとる時でも、その行動の指針となる核であり芯である自分との約束です。勿論その方向性も重要ですが、この点に誠実でいる方は、その『ぶれない強さ』が信頼と魅力につながります。なぜなら、そもそもにこの『芯』を意識的に持たれている方が少なく、持たれてはいても『心がける』程度や、周りにそのコミットメント力が伝わっていないケースが殆どだからです。では外的とは何でしょう。人間関係構築力であり、コミュニケーション能力です。とある調査によると『たとえ自分への接し方は良くても、他のチームメンバーへの接し方に誠実さを感じければ、その上司を頼ることはできない』と答えた方は70%以上でした。チームは日頃の何気ない行動や発言もしっかりと観察していて、我々の誠実さの度合いを確認しながら信頼に値する人物かどうかを判断しようとしているのです。
我々はリーダーとして、今部下からどのように判断されているのでしょうか。まずはしっかりと自己認識持つ必要があります。盲点にしっかりと目を向け、チームからの確固たる信頼を得ることが出来れば、我々の発言にもより耳を貸してくれやすくなりますし、そこからどうやって自分の最大限の結果に繋げられるかと考えて行動する能動性にもつながっていきます。責任と帰属意識をしっかりと感じるチームの想いは、自然とクライアントへの最高レベルのサービスの提供につながり、最大の結果をうみだすのです。