プレゼンの場。それは、聴き手に我々のメッセージを伝える機会なのです。折角の機会ですから、時間が許す限りのメッセージを詰め込んで、持って帰っていただきたい。実はそこに罠があるんです。
もっとも最近に参加されたプレゼンはどのようなものでしたでしょうか。確実に思い出すことの出来る内容はどの程度でしょうか。…とあるプレゼンに、弊社の代表が興味を持って、参加した時の話です。プレゼンターの努力はプレゼンが始まってすぐに見えたそうです。多くの情報が詰め込まれたスライドからは、プレゼンターが多大なる時間をスライド作成に費やしたことが一目瞭然だったそうです。…さて、ここで最初の質問に戻ります。
後日、弊社代表がこのプレゼンにおいて確実に思い出すことの出来る内容はどの程度だったのでしょうか。残念ながらぼわっとは覚えていても、確実と言える内容はほとんどゼロだったようです。キーポイントやパンチラインを聴き手が思い出せなければ、プレゼンターとしてはとても残念に感じるでしょう。 では問題は何だったのでしょうか。
その一部は『聞き手に対して情報をどのように提示するか』です。密度の高すぎるスライドは混乱します。情報を読もうとして、スライドの見える見えないの間を『あれはなんて書いてあるんだろうと』考えているうちに、説明がスタートします。スピーカーは聴き手の納得を得ようと、載せられる限りの多くの証拠データをスライドに盛り込みます。するとその分説明時間が長くなりますから、その兼ね合いで早口になっていきます。言い間違えてたまるかという緊張ともあいまって、モノトーンで早口のまま、要点も一緒につらつらと話していけば、どれだけメッセージ性が聴き手につたわるでしょうか。勿論聞き手が話についてきて来ているかを確認する時間も余裕もないですから、アイコンタクトもゼロです。
そんな中、聴き手が『次のポイントから聞けばいいや』と携帯電話を取り出し始めたらゲームセットです。プレゼン中に一度失われた集中力を取り戻すのは、お菓子の美味しさに気付いた子供に離乳食を食べさせようするくらい大変です。伝えようとしている情報が複雑であればあるほど、難しさは比例してあがっていきます。では、どのようにして聞き手に対して情報を提示するべきなのでしょうか。
考えるべきは、引き算です。聴き手の注意を落とす要因を削ぎ落していけばいいのです。多すぎる情報はその一つです。今回は5つのそぎ落とし要因をご紹介したいと思います。
まずは1つ目:スライド構成です。1つのスライドに対して1つのアイデアを載せる比率をお勧めします。画面に表示される情報は少なければ少ないほど良いです。プレゼンにおける競争相手は、スライドです!聞き手の目線が我々の顔に向いているのか、スライドを見ているのかの勝負なのです。一目で分かるテーマをスライドに乗せ、情報は口頭で説明すればよいのです。
次に、2つ目:複雑な情報のそぎ落としです。どれだけ聞き易く整理出来るかを考えましょう。例えば、多くの情報を入れたければ、あらかじめいくつの情報を伝える予定か明言しましょう。主なテーマが5つあります!といった具合です。終わりの見えないランニングと、最初から何週走るか決まっているのと、どちらの方が集中力が高まりそうですか?ということです。
3つ目のそぎ落としは:飽きの来る話し方です。エネルギーのない独り言のようなモノトーンは勿論避けたいですが、最初から最後までエネルギーに満ち溢れたハイトーンが正解という訳でもありません。強弱が大切です。伝えたいいくつかの単語を選び、スピードやトーンといった話し方に違いを付けます。スライドがシンプルになった分、準備にかける時間が余るはずです。聞き取りやすい話し方の練習をしましょう!
4つ目は詰め込みです。 どれだけ優秀な聴き手でも、大量の情報を早口で伝えられると『で、なにが言いたかったの?』とポイントはあやふやになります。いくら優秀な情報を詰め込んでも、聴き手に届かなければ何の意味もありません。聴き手を信じて、情報を絞ってください。
そして5つ目は:繋がりを感じられない環境の削減です。メモを持つのは一向にかまいません。ただ、聴き手が我々の顔を見ているのに我々が下ばかり向いていたら聞き手は繋がりをどう感じるでしょうか。原稿は話すべきポイントを書き込む程度で十分です。詳細は優秀な我々の頭の中に入っているはずです。ここでも事前のリハーサルをし、書いたポイントから話を出来るように準備時間を使ってください。
以上、5つのそぎ落とし要因をご紹介しました。大切なのは、我々が誠実に『聴き手がメッセージを受け取りやすくするにはどうすればいいのか』を考えることです。そして、ご自身もプレゼンを楽しまれてください。聴き手は我々を聴きに来ているのです。聴き手をことを考え、ご自身の個性を大切に、その為の練習に時間を費やすようにされてください。次回のプレゼンで聞き手が我々のキーポイントをしっかりと記憶してくれる可能性は、グーンとあがることでしょう。