社員のエンゲージメントを上げたいのです。というご相談が以前にも増して増えている傾向にあると感じます。また、ちょうど、先週行ったトレーニングセッション中、受講者の方から「エンゲージメント」というトピックが取り上げられ、やはり、このところエンゲージメントに関しての関心がさらに高いことを痛感しました。そこで、本日は、エンゲージメントについてお話ししてみたいと思います。
社員のエンゲージメントが高い状態とはどのような状態でしょうか。エンゲージメントが高い状態であることのメリットは沢山あります。弊社グローバルでのリサーチで、各企業のエンゲージメント・レベルを左右する重要な要素は 3 つあり、エンゲージメントを保つための重要な要素は1つ。という報告があがりました。こちらのリサーチは、日本でも行われ、国境を越えても同じ傾向を示すという事が分かりました。
早速エンゲージメント・レベルを左右する3つの要素を見てまいりましょう。
一つ目は、チームメンバーと直属の上司との関係性が影響しているという事でした。皆さまとチームメンバーの方々との関係性はいかがでしょうか?リーダーは、様々な価値観や特性を持ったメンバーを率いていくことになります。そのようなチームを率いるには、論理性が大切である。と、思われがちです。実際は、私たちの EQと呼ばれる(心の知能指数)の方が IQ よりもはるかに重要なのです。ハーバードやスタンフォード大学などの著名な研究者達も、心理的安全性がある環境こそ、高いパフォーマンスを発揮できる環境という事が謳っています。近年、そのような環境を作る事がリーダーに求められる要素であるという事に注目が集まっています。
今のビジネスの環境は、とてつもないプレッシャーやストレスがかかります。ボーダレスな世の中、オンライン、リモートワークの環境では、メールやメッセージが24時間届く時代です。タスクを背負い、ターゲット達成に向けて前進を続けるビジネスパーソンにとって、タイムマネジメントは大きな課題です。そのような忙しい状況下で、リーダーの皆様はどのような精神状態でいらっしゃいますでしょうか?自分の言動が周りにいる方々に与える影響を意識されていますでしょうか?チームメンバーに感謝し、励まし、リードすることを心掛けていらっしゃいますでしょうか?
「人は会社を去るのではなく、上司から去る。」という言葉をお聴きになったことがあるかもしれません。チームメンバーの上司との関係性如何では、実際に離職しないまでも、完全にはエンゲージしていない状態になってしまいます。メンバーの方がお給料のためだけに在籍し、トラブルを避けるために新しいチャレンジをせずに、必要最低限の仕事しかしない状態。という状況にお悩みの方、少なくないようです。
エンゲージメントを左右する2 つ目のポイントは、トップマネジメントへの信頼です。会社の上層部、トップマネジメントの示す方向性を、社員の一人ひとりが信じることができればできるほど、エンゲージメントに対する影響力は大きくなります。全ての階層レベルの方々の社内コミュニケーションを良好に保つことは、思った以上の努力が必要です。社員の皆様がしっかりと会社が進んでいく方向性について理解していただくようになるにはどうすればよいのでしょうか。私たちはビジョンとのミッション、ゴール(目標)を伝え、チームに浸透させることができているでしょうか?ミドルマネージャーの皆様はしっかりとメンバーにメッセージを伝達する役割を担えていますでしょうか。
エンゲージメントを左右する3つ目のポイントは、組織や企業のブランドへの誇りです。会社の規模の大小にかかわらず、自分が関わる組織やブランドに対して、誇り、ロイヤリティを持っていられる事はエンゲージメントに大きく影響するという事でした。
さて、それではエンゲージメントレベルを保つための最も重要な要素とは何でしょうか。
社員のエンゲージメントレベルを左右する3つの要素は「直属の上司との関係性」「トップマネジメントへの信頼」「企業ブランドへの誇り」ということでした。さて、後半では、社員のエンゲージメントを保つための、最も重要な要素を見てまいります。それは社員が「自分は尊重されている」と感じることなのです。弊社のリサーチでは、「自分は会社に影響を及ぼしていると感じている社員の60%の方々がエンゲージしている」ということが示されております。一人ひとりを「重要なスキル」を持った人々ではなく、スキルを持った「貴重な人々」として扱う事が大切なのです。リーダーが「人」を中心に組織を作っていける環境がパフォーマンスを発揮しやすい環境なのです。尊重されている 社員は、自分が行った貢献に対して、自分の価値観を尊重した形式で、認められる、感謝される、そして報酬が与えられるときに尊重されていると感じます。つまり、それぞれの社員の真の価値観を見抜き、大切にし、それぞれの方が大切にしているものを同じく大切にすることができるリーダーがエンゲージできるリーダーとなるのです。マクレガーやマズロー、ハーズバーグなどのモチベーション理論などを用いたトレーニングをする機会が多くありますが、そのような理論を学んだあとにリーダーの皆様が最終的におっしゃるのは、結局、一人ひとり皆価値観が異なり、それを把握することなくして、エンゲージメントは維持できない。という事でした。
特にトップパフォーマーの方をエンゲージする事が課題である組織も多いかもしれません。トップパフォーマーの方が離職した場合、企業へのダメージが大きいことはご存じのとおりですが、そのような方々は市場価値が高く、容易に好待遇の企業への転職という選択肢を視野に入れる事ができるのです。トップパフォーマーの方々に、この組織にいるからこそ自分の力が活かされ発揮することができるのだ。と思っていただき「自信」と「つながり」を持ってもらうための「エンパワーメント」が必要になってくると思います。そして、そのようなエンゲージした社員が多く存在する企業であれば、お互いに良い影響を与え合うので、さらに好循環をもたらされるのだと思います。
デール・カーネギーは人に接する時は、相手が「論理の生き物」ではなく、「感情の生き物」であるということを心得ていなければならない。という言葉を残しております。これはリモートワークの台頭や対面でのコミュニケーションがミニマムな環境の今でも、全く変わらない普遍的な事実なのです。
弊社社長のグレッグ・ストーリーは私を採用する面接の際に、こう言いました。
「私の社長としての唯一の仕事は、あなたを幸せにすることです。そうすればあなたは、クライアントを幸せにできます。」
ですから皆さん、お互いの良いところに気づき、認め合い、感謝の気持ちを伝えあう、エンゲージメントが高い組織を作りましょう。そうすれば、組織はクライアントや社会とエンゲージすることができます!