「スピーチ原稿は丸暗記するべきでしょうか、それとも間違えないように原稿を読み上げるべきでしょうか?」という質問をいただくことがあります。そのようなとき、私が思い出すのは、2年前のトレーニング受講者のRさんが共有してくれた、心に響く歌について話したスピーチです。そのスピーチは、今でも心から離れません。彼女は、歌はうまく歌わなくてもいいんだ!といいました。心に響く歌とは、音程を外さずに歌う歌でもなければ、楽譜通りに正確に歌う歌でもない。いくら音程が外れていても心に響く歌を歌う人がいる。音程が多少ずれてても、その方なりに精一杯歌って、聞いている方と感情の部分で繋がったとき、心が揺さぶられる瞬間だと話してくれました。
スピーチも同じなのではないでしょうか。
心に響くスピーチ、私はそれは、母親が歌う子守唄から学べるなと思いました。子供を想う親が謳う子守唄はとても耳に心地いいものです。
そこで、考えてみましょう。なぜ心地いいのでしょうか。歌がうまいからでしょうか。正確だからでしょうか?失敗したらどうしようと思って子守唄を丸暗記するお母さんはいません。間違えないようにと楽譜を見ながら歌うお母さんもいません。その歌は母親達の中にあり、つい口をついて出てくるメロディをリラックスして奏でるものです。時にはアドリブのメロディだったり、ハミングだったり、歌詞に子供の名前を入れて歌ったり。。。自由にその場に合わせて子供に波長を合わせて音楽を紡ぎだしています。そのことで、聞いている子供もリラックスするのです。
プレゼンも、丸暗記して、ガチガチになったプレゼンテーションでは、実際に言葉が聴き手の耳に入ってきません。また、完璧に伝えたいことを伝える為に、手元の原稿とのみエンゲージしているプレゼンターになっている方を見る事があります。情報を正確に伝えるという目的もプレゼンの1つの要素ではあるのですが、それでも聴き手と繋がらなければプレゼンテーションの意味がないのです。オンラインでのプレゼンをすることもあると思いますが、その場合、聴き手に皆様の手元は見えていないので、原稿を読めると思われるかもしれません。これも、実際聴き手になるとお分かりになると思いますが、原稿を読んでいるか読んでいないかは100パーセント聴き手に伝わっています。
さて、丸暗記したわけでもなく、原稿も読まずに、聴き手の前で堂々とプレゼンをしても相手の心に届くプレゼンテーションができていないケースがあったりします。そういうプレゼンターのお話しって「迫力がある。うまいな。」とは思うのですが、なぜか言葉がスッと入ってこない。お話しがお上手ではあるのですが、なんだか自分との壁を感じてしまう。そんな方がいらっしゃいます。それはまるで「私の歌、うまいんです!!!」って大声で熱唱する子守唄のようなものかもしれません。それでは、子供が寝たくても寝ることができません。それはつまり、自分に酔って、周りが見えなくなっているプレゼンターのような感じかもしれません。そのようなプレゼンは本当に心地良いでしょうか。好感を持たれるでしょうか。
さて、ここで確認をしておきたいのですが、プレゼンテーションの目的は何ですか?聴き手とのつながりを持つこと。彼らに私たちのメッセージを受け取っていただき、私たちのことを心を込めて話をする、真摯な人であるという印象をお持ちいただくこと。そしてその結果、私たちに対して好意的になって頂くことなのではないでしょうか。それにより影響力を持つことができるようになるのです。
それでは、心がつながり、好意的なってもらえるプレゼンターになる秘訣、後半で、さらに詳しくみていきましょう。
おかえりなさい。
プロフェッショナルで、自信があり、説得力がある話し手になる秘訣は以前もお話ししたとおりです。テクニカルなで言えば、6つのポイントを押さえておくと見違えるプレゼンターになる事ができます。1「目:アイコンタクト」2「顔:表情、笑顔」3「声:抑揚、スピードや強弱」4「手:ジェスチャーのオンオフ」5「間:沈黙はキーワードを際立たせる」6「姿勢:まっすぐ立ち重心は中央に」これらの事に気を配ると良いでしょう。そうすることで、信頼が増し、人を惹きつける事ができるのです。ところが、これらのテクニカルな事に特に配慮しなくても、自然に話し、聴き手と繋がり、心に残るプレゼンターに出会った事があるのではないでしょうか。
そのような方々とはどのようなプレゼンターでしょうか。そのようなプレゼンターとは、完全にその場に共鳴し、文章を読むのではなく、聴き手の心を読むようにしているのです。聴き手はあなたが話すことに同意しているでしょうか。ポイントを理解しているでしょうか。もう、話の内容を暗記したり、読み上げたり、スライドを読んだりする必要はないのです。スピーチのポイントを決め、それらについて話すというとてもシンプルな事で素晴らしいプレゼンターになることができます。
心からプレゼンに恐怖心を持っていた方がいました。いつも声が震え、原稿を読まないと話せない。できれば話したくないから話すことを避けていた。でもそれを克服したい!という気持ちで私たちのトレーニングに参加されました。12週間の研修の中で、10週目に彼女はついに何も見ずに、自分の言葉で話す事に挑戦しました。その彼女の中から湧き上がる熱い想いを、そのまま溢れる言葉で表現し、時に涙声になりながらも、自分が克服した事について語った彼女そのスピーチは、私たちの心を揺さぶりました。完璧な間、アイコンタクト、ジェスチャー、立ち方、強弱、は作ったり計算する必要はありませんでした。なぜならば全ては自然にできていたからなのです。聴き手との呼吸があっていて、聴き手との心のつながりがはっきりと見えた瞬間でした。オンラインでも彼女が何かを読んでいるわけではなく、その場につながって話しているとわかりました。これほどパワフルな話し方はあるでしょうか。心から彼女に拍手を送りたい!応援したい!と彼女の真のサポーターが形成された瞬間でした。そんな彼女であれば、来週から赴任する海外の新天地でも、彼女の言葉でお話しをし、必要な予算を獲得し、ビジネスを前に進めていける事ができると信じることができました。
今日の最初の問い「スピーチ原稿は丸暗記するべきでしょうか、それとも間違えないように原稿を読み上げるべきでしょうか?」この質問の答えは、お分かりですね。皆様の中に既にあるものを自信をもって話せばよいのです。原稿は暗記する必要はないのです。そもそも暗記せずに話せる自分の中にあるストーリーを話します。間違えないように読むのではなく、聴き手の心を読みましょう。
最後に、とても重要な事をお伝えさせていただきます。それは、デールが言った、スピーチは練習、練習また練習。という事も忘れないでいただきたいという事です。スライドづくりに時間をかけますが、スピーチの練習する時間をしっかりとるという方は非常に少ないようです。本心からそう思うというトピこきlyックそ選んだら、暗記をするのではなく、自分がしっくりと話せるようになるまで練習することはとても大切です。自信という形で現れます。つい口をついて出てくるまるで子守唄のように、自分の一部になるまで練習しましょう。
プレゼンテーションは一方通行の情報伝達ではありません。双方向のコミュニケーションなのです。
子守唄に学ぶ心がつながるプレゼンテーションとは、聴き手の心を読み、既にあなたの中にあるあふれる想いを乗せて話す、心の通ったプレゼンテーションなのです!