価値を感じられないものを誰が買うでしょうか。値段が上がれば上がるほど、その拒否反応は強くなるはずです。
ある日のことです。弊社の代表宛てに、雑誌の取材で、とある俳優と一緒に会談をしてほしいと一本の電話が来たそうです。弊社はメディア対応を基本的にすべて受けるものですので、代表はその雑誌も俳優も存じていなかったそうですが、このお話を快諾しました。当日、カメラマン、俳優、ジャーナリストが揃って現れ、インタビューが始まりました。代表がまず驚いたのが、この俳優は写真撮影のためだけに来ていて、実際にインタビューを行ったのはジャーナリストだったということです。
写真撮影が終わると俳優とカメラマンは部屋の端にずれ、インタビューが終わるとそのまま部屋を出ていき、後にはジャーナリストが残されたそうです。そして残された彼は、今度は雑誌について説明を始めたそうです。ここでさらに驚くべきは、この「ジャーナリスト」が、実は営業であったことが判明したということだったそうです。
雑誌の広告ページの詳細と、広告のサイズ、位置、カラーか白黒か、価格はいくらか、など、さまざまな構成について話し始めた彼のセールスを唖然としながら代表は聞いていたそうです。そんなセールスピッチの中、代表は、彼は我々がどのような顧客層に、どんなアピールをしたいかなどは必要ないのだろうかろうか?と考えていたそうです。
しかもそのヒントはインタビューの中ですでにいくつか落としていて、されるべきは、『先程仰っていたここなんですが、』と深堀の質問をすればよいだけだったそうです。彼はそのまま説明を終え、一言『如何ですか?』と聞いたそうです。そこで代表は、応える代わりにセールス経験は何年目かを質問したそうです。すると彼は、入社以来18年間ずっとしてきたと自信満々に答えたそうです。ここで代表は、もし、彼がセールストレーニングを行う企業の社長にセールスを行いたいのであれば、彼が何をすべきだったかについて、簡単に説明をしたそうです。どんな内容だったのでしょうか。
まず初めに、代表は彼に聴いたそうです、どの程度の下調べをしたのか、と。LinkedinやFacebookなど、個人名と社名が分かれば、ある程度の情報をネットで探すことが出来ます。信頼感を高めるアイスブレイクの手助けとなる『共感の出来る点』は、見つかれば大きな助けになります。たとえ準備の時間が無くても、その場で質問をして共感できる点を探し出すことも出来たはずです。ラポールが出来れば、相手のニーズを聴きだしやすくなります。
ニーズも把握せずに、どのようにニーズという問題に対する解決策となる商品を売ることが出来るでしょうか。しっかり傾聴を行い、ニーズを明確化し、必要な部分に対して必要な商品説明をすることがキーです。全く興味のないエリアにおける商品メリットの説明など、まさに蛇足です。控えめに言っても、この3つの点が最低でもおさえられなければ、セールスが成功する確率は激減することでしょう。有形でも無形でも、セールスが扱うのは解法の提供です。我々は、そのことを常に忘れてはならないのです。