声のトーンや抑揚は、我々の印象に大きな影響を与えます。
想像してみてください。ゆっくりと壇上にあがり、一見自信に満ちた見た目で聴き手を見渡し、プレゼンを始めようと口を開いたスピーカーのお声が、緊張で震えていたら!さぁ聞き手はどんな印象をプレゼンターに持つでしょうか。アメリカの心理学者のアルバート・メラビアンは次のように提唱しています。見た目の情報、耳からの情報、そしてコンテンツの情報の整合性に不一致が生じた場合、聴き手は38%の割合で耳からの情報の印象に引き寄せられる。
プレゼンター自身も、自分の口から出た声が震えていることに気付けば、そこからの焦燥はより一層強まることでしょう。そうすれば、見た目にも焦りが出始めるはずです。コンテンツなんて真っ白になることでしょう。そうなれば、逆の意味で情報の整合性が取れてしまいます。ただ!、逆に言えば、『声のトーンや抑揚をコントロール出来れば』、コンテンツ自体よりも5倍以上の可能性で強調して伝えたいメッセージを聴き手に届けることが出来るのです。では、どのような工夫が出来るでしょうか。
声のトーンや抑揚に変化を入れるには、いくつかアプローチ方法があります。例えば、我々が聴き手に得てもらいたいプレゼンターのイメージを立てることです。『堂々として、安心感を与えるプレゼンター』であれば、方法の一つとしてゆっくりと低めのお声で話すことが大切になってきます。意識する余裕のある方は、この方法が合うかもしれません。
問題は、なりたい自分のイメージが先行しすぎて逆にパニックになってしまうこともあるということです。そういった方は、先ずはご自身のタイプを把握することからスタートできます。元々早口であれば、『大切な点はゆっくりしゃべる』をまずは意識して練習をしてみましょう。抑揚が生まれます。慣れてきて、意識に余裕が出てくれば、別の点にチャレンジしてみてもいいかもしれません。
基本的には、プレゼンターはゆっくりと話すことをクセ付けることをお勧めします。早口で、多くの情報を、特に自分がそこまで詳しくない情報を詰め込まれたら聴き手はどれほどの持ち帰りが出来るでしょうか。折角のプレゼンも、持ち帰りが無ければ意味がなくなってしまうからです。他にも、印象を残したいポイントを強調する方法はいくつかあります。
例えば、ポーズを使うことが出来ます。つまり、重要なことを口にする前に、敢えて一呼吸置くのです。2秒ほど頭の中でカウントしてもいいでしょう。そして、重点を特にゆっくり話すのです。ここで、元々声にボリュームがある方は、敢えて抑え気味に話すという工夫が出来ます。逆に、元々抑え気味の方は、声を強めてみるといいでしょう。このように、トーン調整を行うことで、聴き手は重要点を伝えようとしているんだな、という判断がつけやすく、集中力を傾けやすくなります。とはいえ、どの程度ゆっくり話したり、声のトーンを変えるといいのでしょうか。
ご自身のプレゼンを録画してみることをお勧めします。そして、しゃべるスピードを気持ち悪く感じるくらい、落としてみてください。面白いもので、動画を見てみると、大して遅くないじゃないか、と感じられる方が多いだろうと思います。逆に、聞き易さや、明確性、飲み込みやすさは如何でしたでしょうか?癖というのは直すのが難しいもので、直そうとすると気持ち悪く感じます。他には、話初めに『えー』や『あのー』をつける癖をもつ方もいらっしゃいます。そんな方は、話初めの一言を、意識的にはっきりと強い声でスタートする矯正方法をお勧めします。
次に口にする言葉に意識を集中しないといけないので、出だしの言葉が濁らなくなるのです。この意識があるか無いかで、回数にかなり変化が出ることでしょう。意識するだけで色々な変化が見えてくることかと思います。そのプログレスを録画し、確認することで、ゆっくりと自信を育んでいっていただければともいます。録画を確認するときに意識すべきは、第三者目線でGood&Betterを見てあげることです。我々は自分に辛く当たり過ぎてしまうことがあります。ここを良い点、そして改善すると更に良い点、とみていただくことで、ポジティブな意識改革を行っていただきたいのです。また、2つ、3つのことを一気に意識しようとするのではなく、1つずつ、変化の意識を加えて慣らせていってください。それこそ、二兎を追う者は一兎をも得ず、です。千里の道も一歩より。そして、ご自身の魅力的な声を、聴き手に届けてください。