仕事自体に興味を感じない、報酬が低い、上司に問題を感じる、休みが取れず心身がつかれている、他には、プライベートが上手くいっておらず集中できない、仕事にやる気を感じられないなど、理由は様々です。そんな甘えに応えだしたらキリがない。だったら、やる気のある人だけ集めて仕事をすればいい。という考えが頭に浮かぶ方も、いらっしゃるかもしれません。やる気って、そもそも何でしょうか。
XY理論を聞かれたことがあるでしょうか。アメリカの経済学者、ダグラス・マグレガーが提唱した理論で、性善悪説、つまり、『人間は生まれながらにして『ワイ:責任感を持っている』それとも、『エックス:怠惰である』という考えです。種明かしをすると、どちらが正しい、という論争ではなく、バランスのとり方が大切であるという提唱でもあります。バランスとはどういうことでしょう。
そのキーとなるのが、『欲求』なのです。人は誰しも『欲求』を持っています。寝たい、食べたい、休みたい、褒められたい…なんだか『煩悩!』と言われて怒られそうな気がしてきましたが、悟りでも開いていない限り、我々人間の行動はこの欲求に囚われてしまうものです!逆に言えば、この欲求さえ上手くコントロール出来れば、自分の行動をコントロール出来る!ということなのです。
欲求と言えばよく耳にするのが、マズローの5段階欲求です。マズローによれば、我々人間の欲求は、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の順に発揮されていくそうです。食べたり飲んだりの生理的欲求が満たされて初めて、我々は生活に安全を感じたいと思いはじめ、安全が感じられたら、今度は周囲に受け入れられたいと思い始めるのです。そして、周囲に受け入れられれば、受け入れの上である、尊敬されたい、認められたいと思い、最後になりたい自分に集中するというものです。XY理論が欲求のバランス、といったのは、この欲求に紐づきます。
つまり、衣食住に不安を感じている、自身の身に安心安全が感じられなければ、仕事に対して責任感ややりがいといった、社会的以上の欲求を追い求める状況ですらない、ということですし、自身の存在を肯定されなければ、それ以上のことは求めようともしなくなるわけです。欲求が滞れば、人の行動力にどのような影響がでるでしょうか。自分が何のために仕事をしているかが分からなければ、能動性にどう影響しそうでしょうか。つまり、相手の能動性を引き起こすキーは、相手の欲求を刺激することなのです。なるほど、早い話が、日々の仕事ぶりを認め、報酬を与えればいいのか。聞こえは、簡単ですよね。果たしてそうでしょうか?
役職が上がる、給料が上がる、こういった社会的にも承認的にも欲求が埋まりそうな報酬であれば、誰にでも向上心を与えるのでしょうか。その欲求、果して相手が本当に求める欲求なのでしょうか。例えばワークライフバランスを大切にしたいという方なら、給料がある程度までいけばそれでいいし、それよりも早くうちに帰らせてほしい…と感じるでしょう。
何らかの理由で、欲求が滞った状態が続けば、人はその状態にも慣れてしまいます。『欲求、特にないです』という方もいらっしゃいます。まさに前半でお話しした、欲求が滞っている状況です。もったいない状態になっているのです。こういった方の欲求を見つけ出してあげることも、時としてリーダーシップに求められることでもあります。仕事を任せる理由づけはどうでしょうか?
単純に仕事を与えられれば、それは譲渡される側にとってはプラスアルファのタスクでしかありません。まずは相手の状況を確認する必要があります。そして、そのタスクを行うことがどう相手に役立つのか、その紐づけをしっかりと行う必要があるのです。一人一人に会った欲求を見つけだし、その欲求に沿った譲渡、相手の状況確認、基準を共通認識で設定し、フォローアップをしてプログレスを認め、なおすべきには答えではなく指針をみせることで当事者意識や責任感、自主性や自信を育んでいく必要があります。
全員の欲求を見つけ出すのは、簡単ではありません。時間がかかります。聞き出せるだけの関係性も重要でしょう。日々の業務の中ですべてをこなすのは、非常に難しいのです。だからこそ、我々は適切な人物に適量な権限委譲をしなければなりませんし、その為には日々、チームのメンバーがどういった人物であるかを把握するために、チームに注意を払う必要があるのです。