プレゼンターのスタイルに絶対的な正解はございません。どのスタイルにしろ、絶対的に欠かせない要素はいくつかあります。その一つが『信じる』ということです。
あまり自分が詳しくない業界の方のプレゼンや説明会に参加されたご経験はお持ちでしょうか。聴き手として我々は勿論、そもそもの複雑性は分からないわけですが、なぜかプレゼンを聴いた後、『いいプレゼンだった』と感じられることがあります。論点が明確で、道筋や選ぶ言葉が分かり易く、一貫性があり、しっかりと聴き手を意識している、など我々がプレゼンターとして意識すべき要素はいくつかあります。
その中でも、その根底として大切な要素が『信じる』ということなのです。ご自身のプレゼンを行う時、どのような感情でしょうか?中には不安から来る緊張を感じられる方もいるかもしれません。他には自社や商品、サービスの良さを伝えたい、ポジティブな印象を持ってもらいたい、と思われる方もいるでしょう。
ひとつ、お聞かせ下さい。そういった感情の矢印は、誰に向いているでしょうか。聴き手でしょうか。それとも自分に向いているでしょうか。プレゼンは勿論、日々のコミュニケーションにおいても、相手に影響を及ぼす、持ち帰りの高いメッセージが届くためのカギは、『聴き手が聞き手自身への関係性をどれほど感じてもらうか』なのです。我々が伝えたいという気持ちなど、矢印が自分感情に優先されたコミュニケーションを行うことは、我々が美味しいと思うからと相手の腹具合度外視で無理やり相手の口に詰め込んでいくようなものなのです。それでは、聴き手に刺さるはずもありません。ではどうすればよいのでしょうか。
感情や思いを込めることの大切さを以前のエピソードでも触れたことがあります。これは、記憶に残るメッセージと感情の高まりには密接な関係があるためです。例えば退屈だ・つまらないといった感情を0から10の評価で表すとすれば、感情の『高まり』という意味ではゼロでしょう。ゼロという数字にいくら高い数字を掛けたところで、答えはゼロです。つまり、聴き手の感情の高まりがゼロのプレゼンをすれば、どれほど中身が良いものだとしても伝わるメッセージ性はゼロである。ということなのです。聴き手の感情を高めるには、面白おかしくコミカルにプレゼンをする、ジョークを入れる、などと言ったことも出来るでしょう。
勿論感情の高まりが一切ないよりは良いです!が、聴き手の持ち帰りは自然とジョークの方に集中しがちになることでしょう。小手先のスキルなく、プレゼンターの感情に対する共感を生み出すことがキーになります。小手先でなく、感情の整合性をとるためには、伝える内容が『聴き手にとって大切であり、価値がある情報である』とこころから信じる心構えが大切なのです。そしてプレゼン中はまるで息をするかのように常にこの意識をしている必要があります。そして、その強い思いを、プレゼンに載せるのです。とはいえ、データや読み上げるように渡された原稿など、感情を入れにくいものはどうするのか?
事前にしっかりと目を通し、『聴き手にとって役立つポイント』がわかるキーワードにラインを惹いておくと良いでしょう。そして、そのキーワードを読み上げる際にジェスチャー、スピードや声のトーンに抑揚を入れることで対比をうみ、聴き手がキーポイントを理解しやすくしてあげるのです。更に、それを補う証拠として、事例、エピソード、サポートデータなどを入れて聴き手の納得感を高めると良いでしょう。単に会社や商品を好きになってほしい、ではなく、聴き手にとって価値がある情報を伝える、という誠実な聴き手フォーカスの心構えをとることで、メッセージは聴き手に届いてくれます。そしてそれが実感出来れば、プレゼンターとしての自信につながることでしょう。そうなれば、プレゼンをすること自体も更に楽しくなり、ポジティブな感情の連鎖を引き起こし、より一層、高いメッセージ性を持ったプレゼンとなることでしょう。