職場の心理的安全性の重要性が一般的に語られるようになりました。
心理的安全性を担保するためにはリーダーとしてできる事は何でしょうか。
心理的安全性がある人間関係はリーダーとしてのみならず、一人間として誰かと心から繋がる際に重要な事です。そのためには、自己開示をすること、自分の誤りから話すことなどが推奨されていますが、それは、実際は職位が上がれば上がるほど難しいというお声を良くお聴きします。
一つには、リーダーは部下に心配をかけてはならない。リーダーは尊敬されるべき存在でなければならない。リーダーはまわりに弱みを見せられない。と思っているからかもしれません。
「自分は完璧である。」というようにふるまわなければならない。という気負いから、知らず知らずのうちに、心に鎧を着せ、その重さで疲れ切っているという事もあるかもしれません。
心に重くのしかかった重圧は、自分では気づきづらいですし、心の中なんて他の方にも見えてないと思っているかもしれませんが、、、他の方からみると、意外と何かしらの「違和感」として感じてしまうものだったりします。
心を鎧で完全武装したリーダーがチームを率いる場合、チームメンバーはどのような状態になるでしょう。
想像に難くないと思います。チームメンバーは、リーダーが完璧すぎて、自分が小さく感じる。いつも戦闘態勢のリーダーの顔色を窺うようになり、距離を取り、問題が起こった際に、しかもそれがどうしようもならないくらいに大きくなるまで言い出せない。。。そんな状況ですが、これをご経験された方もいらっしゃるかもしれません。
リーダーが着ている心の鎧は、本人が重たく感じているだけではなく、周りを取り巻く環境の雰囲気も重たくし、チームメンバーのパフォーマンスやアウトプットにも影響が出てくるのです。
誰でも、周りの誰かが鎧を着ていたら、自分だけ素の状態でいるのは心もとないと思います。それなので、おのずと他のメンバーも不必要な重い鎧を装備してしまうのです。当然、判断や行動も鈍くなってしまいます。相手の鎧を脱がせることは難しいので、まずは自分から鎧を脱ぐことで、相手ももう、こんな重い物は置いていこう。と改心してくれるというロジックです。
それでも、「やはり鎧を脱いで、親しみやすくなったら舐められるのではないですか。」というご質問もよくいただきます。
鎧は着ていないし、軽やかで親しみやすく、周りから尊敬されている方がこの世に存在するということに異論を唱える方は少ないのではないでしょうか。では、もう一度考えてみましょう。親しみやすく、チームの皆様から慕われ、尊敬され、かつチームが成果を出しやすい環境を創れる方とは、どのような方々でしょうか。それは完全武装し隙のないリーダーとは真逆の「実るほど首を垂れる稲穂かな。」に象徴されるような謙虚で柔軟なリーダーなのではないでしょうか。
では、鎧を脱ぎたい!でも、鎧の脱ぎ方が分からないです。という方もいらっしゃると思います。冒頭で申し上げたように、自己開示をしたり失敗談を共有することも一つの方法です。そこまで恥ずかしいことをしなくても、、、気軽にお互いの日常や価値観を共有しあい、お互いに大切にしているものを大切に扱うということが有効です。加えて、実際は、プロフェッショナルとして、どこまでプライベートの事を共有していいのか。とお悩みをお持ちの方もいらっしゃるようです。
様々なご意見があると思います。
プライベートと仕事は分けるべきというお考えもあるようです。この件については海外でも意見は分かれるようで、プロフェッショナルである以上、プライベートを仕事に持ち込まない。という意見もあるようです。反面、海外では、職場関連のイベントには配偶者やパートナーと一緒に参加する機会も沢山ありますし、おはようの後の挨拶は、How are you?と声をかけ、近況をシェアしたり、お子様のスポーツの練習試合の事などカジュアルな日常についておしゃべりをしてから仕事に取り掛かるという習慣を持つオフィスも少なくないです。海外ではデスクにはご家族やパートナー、ペットの写真を飾ったりするので、お互いのプライベートや価値観が垣間見れるという状況でもあります。
弊社のオーストラリア人の社長は、プライベートの事、お子様のこと、奥様の事、ご自身の健康状態の事もオープンに話してくださいます。社員が結婚したらパートナーシップについてもアドバイズをしてくれたり、社員に子供が産まれたら、子育てについても目を細めて嬉しそうに助言をしてくれます。男性社員の子育ての参加にも寛容で、フレキシブルな働き方を奨励しています。彼は、和菓子や甘いものが大好きで、口の周りに白い粉を沢山つけて大福をほおばるような姿を見ると、なんだか親しみが湧いてきます。鎧で完全武装とは真逆のリラックスした姿を私たちに見せてくれることに感謝の気持ちで一杯になります。
弱い犬ほどよく吠えるというものです。
強い犬は威嚇する必要はないのですね。
おとといの事です。
フランス人のあるマーケッターの方とお話しをしておりました。
その方はこうおっしゃっていました。
自分がなぜ、日本に来たかというと日本の漢字に魅せられたからです。
漢字の「無敵」という言葉は素晴らしいと思います。フランスでは、「無敵」とは、文字通り完全無敵でどんな相手と戦っても絶対に勝ち、だれが戦いを挑んでも歯が立たない強い人が「無敵」です。日本で「無敵」とは「敵がいない」つまり「みんな友達」ということなのです。誰とも戦う必要がないことを意味します。それは、デール・カーネギーの「人を動かす」に書かれている「友達を得て影響を与える」の考え方と近い考え方だと思います。
この言葉を聴いて、彼のこの言葉は、まさに、日本のリーダーの皆様に勇気を与える言葉だと思いました。
ですからみなさん、安心して心の鎧を脱いでみてください。そうすれば、皆に慕われ、影響を与えられるようになります!