前回のエピソード52は、日本におけるダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンについて、信用、信頼、尊敬と心理的安全性がとても大切であること、和を以て貴しとなすという考え方が定着している日本では世界のDEIとは異なる独自のDEIの重要性に着目していく必要がありそうであるということをお話しさせていただきました。
今回のエピソードでは、さらに、日本におけるDEIについて深く考えて参りたいと思います。
まず初めに、把握しておきたいことは、私たちの見た目、行動、話す内容、話し方の総和が私たちのd信用、信頼、尊敬とイコールであるという事です。
そして、私たちの信用、信頼、尊敬は私たちの在り方そのものとイコールであると言えるとも思います。
先日のDEIのトレーニングの受講者の方から、信用、信頼、尊敬との相関性という点では、見た目、行動、話す内容、話し方の総和というよりは掛け算ではないでしょうか。と言う共有がありました。確かに、見た目、行動、話す内容、話し方のどれかがマイナスであれば、信用、信頼、尊敬という点では、マイナスになりますし、見た目、行動、話す内容、話し方のどれかがゼロだとしたら、信用、信頼、尊敬はゼロになってしまいます。
そういう点から、足し算ではなく、掛け算であるという考え方はとても理にかなっていると思いました。
それでは、前半でお話しした、見た目、行動、話す内容、話し方の要素について詳しく見てまいりましょう。
1. まず初めに、私たちの見え方についてです。普段から意識しておりますでしょうか。本当の自分として自分を表現するのにふさわしい表情でいるでしょうか。
意識をしているときは「笑顔」でいることはできると思います。ふと気を抜いたときの表情が険しかったり、苦しそうな表情をしている方をお見掛けすると、笑顔でいるときにも無理をしているように見えてしまいます。
無理のない、等身大の自分らしい自分を常に見せる事ができているでしょうか。
私たちは相手の表情で自分は歓迎されているのかどうかを感じる事ができると思います。まずは自分の態度から相手を受け入れているという事を示してさしあげましょう。それをすることで、相手の方の心がほぐれ、相手の方も力を発揮しやすくなります。
2. 行動について
私たちの行動についてはどうでしょうか。たとえばボディランゲージについて意識を配っていらっしゃいますでしょうか。このポッドキャストをお聴きの方は、腕を胸の前で組んだり、反り返って話しを聴いたり、首を横に振りながら話を聴くということを敢えて意識的にするという方はいらっしゃらないと思います。無意識の時はどうでしょうか?無意識に人の話を聞いている時に「あなたのアイディアは気に入らない」というメッセージを無言で伝えてしまっていることが起こっているかもしれないのです。言葉にはしていませんが、メッセージは明確に伝わってしまうのです。
3. 話す内容について
これについては、私たちは自然と日常的に気を配っていると思います。ここで注目したいのは、見た目、行動、話す内容、話し方の中で、この話す内容に最も気を配りがちであるという事です。メラビアンの法則についてご存じの方も多いと思いますが、見た目、話し方、話す内容に一貫性がない時に、聴き手は見た目と話し方、すなわち視覚情報を55%と聴覚情報を38%優先的に受け取るというデーターがあります。私たちが普段最も意識している話す内容についてはメラビアンの法則に基づくと7%の部分にすぎないということをお聴きになったことがある方も多いと思います。すなわち、せっかく良いことを話すのであれば、話す内容同様に見た目と話し方にも気を配ったほうが良いということになります。
4. 話し方について
そこで、4番目の要素である話し方について詳しく見てまいりましょう。声のトーン、抑揚、間のとり方は実際の言葉に勝るとも劣らないものであるという事はこれまでもみてまいりました。ご存じのとおり、言語情報では「ハイ」と肯定的な事を言っていても、「はーーーーい」と返事をすれば、聴き手は肯定的に受け取らないということです。「どのように話すか」はそれだけ大切だということを改めて意識すると良いでしょう。
ここまでのお話しから、無意識に行っている我々の言動wが他者にどのようなインパクトを与えるかということが大変重要であるということに気づかされたと思います。
老子の名言にも
人を知る者は智なり、自らを知る者は明なり
と言う言葉があります。
まさに、他者について知る事は大変有効です。さらに言うと自分について知ることはできていますでしょうか。自分について深く向き合うことは、簡単なようで難しいことかもしれません。
自分を客観的に見て、自分のコミュニケーションがどれほど他者に影響を与えているのかを知ることを考えていくタイミングだと思います。DEIのトレーニングの中でも、DEIについて様々な学びや理論をインプットすることも行われますが、自分の傾向や意識的、無意識の自分についてもを深く向き合う事も組み込まれています。自分でも知らない自分に出会う事になったという感想を持った方もいました。
まさに、次回以降にお話しさせて頂く、アンコンシャスバイヤスやマイクロアグレッションという考え方は自己認識と向き合うトピックになってまいります。
自己と向き合うことが多様性を受け入れ、包括的な環境を創る第一歩です。DEIについて公に議論される今、「自分という人間と深く向き合うこと」が、改めてこの時代だからこそ求められているということなのかもしれません。