弊社の代表がとある英語のプレゼンに参加されたときのお話しです。スピーカーは日本人の方でしたが、発音も声量も、英語力に問題は感じさせない方だったそうです。経歴もご立派で、日本の大企業のかなり上の役職を持たれていました。『ところがね。』我が社の代表は続けました。『プレゼンがすすむにつれ、聴き手との温度差にズレが生じ始めたんだよ』と。彼が周りの聴き手をそっと見渡したところ、何名かの方は机の下で携帯をいじっていたり、中には必死で眠気と戦っている方もいたそうなのです。なぜでしょうか。原因の一つは、スライドでした。特徴的だったのは、一つのスライドに込められた膨大なデータでした。色や形もバラバラのデータが所せましと込められていて、その一つ一つも解読に時間がかかるものだったようです。重要なメッセージが漏れてしまったのは勿論、解読を放棄した聴き手の中には、聞くこと自体をあきらめる人物まで出てきます。この形で集中が切れると、聴く意欲自体が抜けてしまっているので、注意を引き取り戻すのはまぁ大変です。キーワードは、シンプルです。1枚のスライドには1つの論点のみを示し、色の種類も出来る限り抑えることをお勧めします。対比を示すために2色までに限り、他の重要ポイントは次のスライドで載せるようにしましょう。聞き手として自分でスライドをみて、3秒でそのスライドのキーポイントが分からなければ、もっとシンプル化する必要があります。とある研究によると、マルチタスクが出来る人間は存在しないようです。脳は一度に一つのことしか対応できず、事レベルの高い思考という作業を組み入れると。別のことは出来ないそうです。そして、出来るという人は、実は一緒にやっているのではなく、とんでもないスピードで切り替えを行って、あたかも一度に行っているように対応できるだけだということなのです。この研究が正しいものと仮定すると、眼で見ている情報が、文字通りそのまま耳から入る情報と同じ場合を除き、聴き手の脳は自分の言葉で眼から入るデータの処理をしています。そこにスピーカーが独自の見解や情報を入れ始めれば脳は混乱を起こし、エラーを起こしてしまいます。極論で言えば、聴き手が解読している時間は我々の話を聞いていない。と考えてください。一スライドごとに10秒間黙るプレゼンターなんていませんよね『こんなデータが出ています』といってスライドをみせて黙って2から3秒でしょう。ですからその時間の中で解読できるデータ量にする必要があるのです。
先ずデータをみせるスライドを作る。そして重要ポイントは次のスライドでポップアップなどの補足ツールを使って強調するようにしてみましょう。聞き手の理解が格段と上がるのを体感していただけるでしょう。勿論、聴き手の理解度が大切になってきますから、聴き手の専門性にあわせた調整を意識してください。そして、重要ポイントが更に際立つよう、声に抑揚を入れ、ジェスチャーを入れながら『ここだぞ!ここが大切だぞ』と聴き手に分かり易くしてあげるのです。ジェスチャーも抑揚も、単にいれるのではなく、理解を助けるという意味を持って入れるようにしましょう。全体の整合性のとれたプレゼンを行えば、聴き手のリアクションに大きな変化が出ることを実感いただけます。